最近は老年学(gerontology)の応用分野として金融ジェロントロジー(financial gerontology)の研究が進んでいるようで、いつの間にか気がついてみたら自分が研究標本にされる年となってしまった。この学問の研究対象である高齢者のことを何か気の利いた専門用語でどのように呼ぶのかと思いちょっと調べてみたがgerontという単語は見つけたがとくに専門用語ともいえないようだ。まだ、学術用語にしっくりくるような名称は見付かっていないようだ。
この 高齢者が 何か一念発起して勉強をしようと思うと学校に通ったり通信講座を受けることが思いつく。シニアのリカレント教育が提唱されているが何れにしてもお金や時間がかかってしまう。金もかけず煩わしい人間関係とも無縁で学び直すよい方法はないものだろうか。
幸いなことに最近のネット環境は非常に優れていて、検索エンジンを使って知りたい言葉を打ち込めば結構いい資料や教材を読むことが出来る。大変に便利な時代になったと思うが、便利になるとそれを悪用した罠や仕掛けも多くなる。
「メールけいしちょう」に登録しておくと、朝方は変質者の出没情報のメールが多く着信するが、午前10頃からアポ電の注意喚起のメールが多く届くようになる。
アポ電にも幾つかのパターンがあるようだ。よく知られている第1のパターンは、誰でも持っている、「損をしたくない」という人間の心理を突いて、役所などの公的機関の名をかたり還付金があるので速く手続きをするように促して結果的には送金させたりキャッシュカードを詐取するタイプがある。
第2のパターンは「息子などの家族や親族が困っていたら助けたい」という人間の心理を突いて、息子や親族、息子の友人、担当医師などの名をかたり、結果的に送金させたりキャッシュカードを詐取するタイプがあるようだ。この応用バージョンとして架空の権利(例えば老人ホームの入居権など)の名義貸などを理由に裁判になると脅すパターンもあるようだ。
第3のパターンは逆に電話会社などの名をかたって未納料金があると偽って罪悪感を誘発させ、さらに裁判になるなどと慌てさせ振り込ませたり電子マネーを詐取するパターンもあるようだ。
第4のパターンとして最近よく目につくのはPCサポート詐欺がある。ネットで検索しているうちに突然にウイルスを検知したとか外部からハッキングされているといった警告が表示され誰でも知っている大手のソフト会社のサポートセンターの電話番号が表示され相談するよう促される。ポップアップ通知を悪用した手法であり、電話をすれば結果的にお金をだまし取られる羽目に陥る。
ポップアップ広告は広く使用されている手法でウイルスに感染しているわけではない。「あなたにお似合いの靴はこれ」 といった広告と同じである。ただ、書かれている内容が靴ではなく偽りの警告文や罠の電話番号、有名な会社名やロゴマークなどが表示される仕掛けになっている。ここは冷静に対応する必要がある。
夢中になって調べものをしているとネットサーフィン中に知らずにポップアップ通知の許可ボタンを押していると、この偽の警告メッセージは消えず、パソコンを再起動させても再び表示されることがある。これを消すにはブラウザーの設定でポップアップ通知をブロックして無効化する必要がある。詳しいことはIPA情報処理推進機構のサイトなどで紹介されている。
ネットサーフィンするときには前もってブラウザーのプライバシーとセキュリティのレベルを標準ではなく高度に設定しておく必要があるだろう。
高齢者にとってネット検索は視力も弱り手も滑りやすいので細心の注意が必要だろう。しかし、幸いなことにごく最近になってChatGPTとかBardといった生成AIが利用できるようになってきた。何か調べものをするときには、はじめに生成AIに色々と角度を変えて質問をしてポイントを絞ったうえでネットサーフィンすれば様々な危険な罠に遭遇する機会を低減さすことができるだろう。
2023年9月26にBardを使って実験してみた。
Bardに対する質問
雁の束の間に蕎麦刈られけり
誰の俳句か
Bardの回答
石田波郷の俳句です。
石田波郷は、1906年から1969年にかけて活躍した俳人です。代表的な句として・・・・・・・・・
以下省略
続いて次の質問をしてみた。
Bardに対する質問
雁の束の間に蕎麦刈られけり
山本健吉の歳時記に載っているか
Bardの回答
はい、載っています。山本健吉の『現代俳句歳時記』(1966年)の「秋」の項に、以下の解説とともに掲載され・・・・・・・・・
以下省略
意外にも的確な回答だったので少し驚いた。けちを付ける気は毛頭ないが、日本語の難しさでもあるが、雁を「かりがね」、「カリガネ」と書き換えて同じ質問すれば全く異なる回答をする可能性がある。
念のため次の質問もしてみた。
Bardに対する質問
bard の出力結果の著作権者は誰か。引用する場合の注意点は
Bardの回答
著作権法では、著作物を創作した人が著作権者となります。Bardは、Google AIのエンジニアと科学者によって作成されたため、Google
AIが著作権者となります。 以下省略
ということだった。
その後、2024年2月に入ってから生成AI BardはGeminiに改称された。GeminiにもGemini Ultraとか様々な上位レベルのモデルがあるようだが、とりあえず無料で使えるバージョンで以前にBardにした同じ質問を2024年2月13日午前中にしてみた。
上記と同じ質問
雁の束の間に蕎麦刈られけり 誰の俳句か
無料バージョンのGeminiの回答
「雁の束の間に蕎麦刈られけり」は、江戸時代の俳人、小林一茶の句です。
作者:小林一茶
季語:雁(かり)
意味:雁が飛んでくる間に蕎麦が刈られてしまった。早いなあという驚きと、季節の移ろいの速さを感じさせる句
以下省略
上位バージョンのGeminiだと別の異なった回答をするのかもしれないがBardの時の回答との違いに驚いた。いずれにしても生成AIは発展途上にあるのだろうと少々安心もした。
念のために、Geminiに後日、2024年4月6日午後3時前に同じ質問をしてみた。
質問
雁の束の間に蕎麦刈られけり 誰の俳句か
無料バージョンのGeminiの回答
はい、この句は昭和29年(1954年)に刊行された俳句雑誌「雨覆」に掲載された俳人・石田波郷(1918年~1987年)の句です。
...............
以下省略
今度は的確な回答が返ってきた。2ヶ月弱の間に機械学習を積み重ねたのかもしれない。
同じ質問を定期的に繰り返し、その回答の推移を確かめるのも結構面白いと感じた。
ささやかな経験談であるが、PCの不具合とかソフトウエアの使い方で分からないときに生成AIに色々と質問する結構よい解決法や解決のためのヒントが示されることが多いような気がしている。また最近のニュース(特に海外のニュース)によく出てくる言葉で意味が分からないときにはwhat is ○○○? と簡単な英語で質問すると結構、わかりやすい説明をしてくれる。MAGAとかpro lifeやswiftonomics あるいはshrinkflationなど高齢者の自分にとっては不明だった言葉も英語で質問するとわかりやすい回答が得られる。やっぱり機械学習に使われる英語圏の情報量が圧倒的に多いのかもしれない。ちなみに、windows11に装備されているcopilotで同じ質問をしたところ松尾芭蕉の句との回答だった。日本語の文献の機械学習の積み重ねは今後の課題かも知れない。筆者は辞書を調べるのが面倒になったのでcopilotを簡便な字引や翻訳機として利用している。
この 生成AIも種類が多くなってきているので、色々と角度を変えた質問を繰り返すことでその特長をつかめるかも知れない。色々な変化球や癖玉の質問をぶつけてみると面白い。
幸にも、
人間であれば、いかに寛容な人であっても、しつこく質問されれば怒りだすだろうがAIロボットはいつまでも付き合ってくれる良さがある。
このようにして事前に質問による予備知識を持っておけば、ネット検索や図書館などで有用な資料にピンポイントでたどり着きやすくなり自由研究の有用なツールとなるだろう。
生成AIはいいことずくめのツールにも思えるがオートメーション時代の到来を風刺したチャップリンの映画モダンタイムズから連想すると必ずしも安閑としていられないかもしれない。投資運用をAIロボットに任せれば運用コストは下がるかもしれないがアルゴリズムが類似していればすべての運用ロボットが同じような意思決定をすることで株価が上がるときには極端に上がり、下がるときには極端に下がる事態が頻発するかもしれない。機械学習で十分にトレーニングを経た問題については効果的な解決策を示せても、未経験、未訓練の問題に遭遇したときにAIロボットがパニックに陥り大混乱をするかもしれない。そのような時にはAIロボットの電源を切って人間が一呼吸置いて人間同士の交渉で事態に対処する必要も出てくるだろう。皮肉な話になるがAI監督が19世紀の名俳優そっくりさんや大作曲家そっくりさんを使って21世紀版のモダンタイムズの映画を生成するかもしれない。結局のところ何が好きで嫌いかは生身の人間自身が判断することなので人間としての感性を高めたいと思う。
AIは便利なツールであるが、この他にもネットで公開されている信頼できるフリーソフトも自由研究に不可欠のツールである。ネットでは無料で利用できるいろいろな優れたソフトが公開されている。遙か昔の学生時代にFORTRANというコンピュータ言語の実習を受けたが、当時は大学の生協でコーディングシートとパンチカードを買って、簡単なプログラムを書いて、それを自分でカードにパンチしてから、カードをやや太いゴムバンドで括って電算室に提出した。1週間後くらいにアウトプットリストが返ってきたが、何も計算結果が印字されていないのでやっぱりプログラムミスをしたかと思ってチェックしてみるとカードのパンチミスだった。このような失敗を数回繰り返してやっと計算結果を得ることが出来た。今では無料の統計ソフトRをパソコンにインストールしておけば茶の間でテレビを見ながら当時よりも遙かに複雑な計算が出来るうえにグラフィック表示も格段に優れている。
さらによいことにはMAXIMAという無料の数学ソフトを使うと数式処理や微積分など記号処理も数値計算もやってくれるので自分のように数学の不得手の人間にとっては大変に助かる。無料でMITの数学の先生に住み込みの家庭教師として御世話になっている気分である。
このように生成AI、検索ツール、統計ソフトR、数学ソフトMAXIMAがそろう環境になったので、もう一度、学生時代に戻ったつもりで、今ままで生半可な理解しか出来ていなかったことを再学習してみようと思い立った。小学校の子供達が行っている自由研究を見倣いながら自由研究発表をしようと思う。実際の教育現場での自由研究がどのようなものかは全く知らないが自由研究という言葉には大きな可能性とか夢が感じられて大変に気に入っている。何か簡単な課題でも、その分析過程で使ったプログラム言語のソースコードと分析に使った数値データが明示(公開)されていれば他者が容易にその分析過程を再現することができ、そのロジックや計算結果の解釈の妥当性について検証ないし議論を深めていくことも容易に出来るだろう。特に公的機関が「うちのマクロモデルのシミュレーションでは斯く斯く然々です。」と言う場合には別途にモデルの詳細を開示し、ソースプログラムやデータもダウンロードして誰でも分析過程を再現できることが望ましいだろう。
高性能のパソコンが普及している現在では何か会議で議論する場合には単に言葉尻を捕らえ合ったり、暗に自らの自慢話を披露するような場にするのでなく、互いに箱庭のような具体的なモデルを開示しあいモデルの再現性を確認した上で、より深く生産性の高い議論をすることが必要だと思う。たとえ趣味で簡単なプログラムを作る場合でも、ある意味で自らの無学浅学振りを公に露呈さす辛さはあるが、誰もが自ら作ったモデルやプログラム等を公開し合えば、スポーツと同じく互いの弱点を見付けて切磋琢磨でき皆でレベルアップできると思う。
前述の繰り返しになるが、高齢者になると視力も衰え、指先も不器用になるので、サイトを見ながら不用意にクリックしたりすると、予想外のサイトに飛ばされたり、なかには○○○については、ここの論文が詳しいなどとリンクが貼ってあり、うっかりクリックするといかがわしいサイトに飛ばされたりすることがある。そこでウイルスソフトの保護者監視機能を常時オンに設定しておくと、うっかりクリックしても瞬時に遮断してくれるので大変に便利である。ビール会社が切れ味抜群、新製品発売などとTVコマーシャルを流していたので新製品の成分表を確かめようと検索したら、未成年者はお酒のサイトは見れませんと直に遮断されることがあるが、その場合は保護者の立場に戻りこのページは見れるように許可を与えればよい。ネットサーフィンをする時にはブラウザーのオプションでプライバシーやセキュリティレベルを高度に設定しておく方がよいかもしれない。