高齢者の学び直し(金いらずの我流あれこれ)--- 生成AIの利用と自由研究のすすめ

最近は老年学(gerontology)の応用分野として金融ジェロントロジー(financial gerontology)の研究が進んでいるようで、いつの間にか気がついてみたら自分が研究標本にされる年となってしまった。この学問の研究対象である高齢者のことを何か気の利いた専門用語でどのように呼ぶのかと思いちょっと調べてみたがgerontという単語は見つけたがとくに専門用語ともいえないようだ。まだ、学術用語にしっくりくるような名称は見付かっていないようだ。
 気のせいか病院や調剤薬局で何げない質問をされる機会が増えたように感じる。マイナンバーカードが健康保険証になったので何時どんな検査をしたか情報がわかるようで、それをわざと尋ねて当方の記憶力をテストしているように思える。情け無い立場になったと思うが世間からそのように評価されるなら、それに適応していくしか仕方がない。 この 高齢者が 何か一念発起して勉強をしようと思うと学校に通ったり通信講座を受けることが思いつく。シニアのリカレント教育が提唱されているが何れにしてもお金や時間がかかってしまう。金もかけず煩わしい人間関係とも無縁で学び直すよい方法はないものだろうか。

幸いなことに最近のネット環境は非常に優れていて、検索エンジンを使って知りたい言葉を打ち込めば結構いい資料や教材を読むことが出来る。自由研究には大変に便利な時代になったと思うが、便利になるとそれを悪用した罠や仕掛けも多くなる。

 

警視庁と国民生活センターの情報で学ぶ


  学び直しの第一歩は最近の巧妙な詐欺に引っかからないようアンテナの感度を高める必要がある。その対策の一つとして「メールけいしちょう」の報告に注意を払うことだろう。 「メールけいしちょう」に登録しておくと、朝方は変質者の出没情報のメールが多く着信するが、午前10頃からアポ電の注意喚起のメールが多く届くようになる。

アポ電にも幾つかのパターンがあるようだ。よく知られている第1のパターンは、誰でも持っている、「損をしたくない」という人間の心理を突いて、役所などの公的機関の名をかたり還付金があるので速く手続きをするように促して結果的には送金させたりキャッシュカードを詐取するタイプがある。他にも家族や親族が困っていたら助けたい」という人間の心理を突いて欺したり、未納料金があると偽って罪悪感を誘発させ慌てさせ振り込ませたりする手口が知られている。また、ネットで検索しているうちに突然にウイルスを検知したとか外部からハッキングされているといった警告が表示され有名な大手のソフト会社のサポートセンターの電話番号が表示され相談するように誘導するポップアップ通知を悪用したパソコンサポート詐欺もあるようだ。 ネットサーフィンするときには前もってブラウザーのプライバシーとセキュリティのレベルを標準ではなく高度に設定しておく必要があるだろう。

 詐欺を仕掛ける側も手口をアップデートしているので「メールけいしちょう」で最新の手口を知っておくだけでなく、国民生活センターのサイトから消費者トラブルの情報も仕入れておく必要があるだろう。一応は合法だが問題が多いと思われるような消費者トラブル事例などが紹介されている。警視庁と国民生活センターの情報は高齢者にとって見逃すことは出来ない。何れにもメール配信の申込み手続をしておくとよいだろう。

 最近よく話題となっているが、警察署やその他の官公庁の電話番号(特に代表電話番号)を偽装表示させて欺す手口が報道されている。電話もIP電話となっているのでデジタルの専門技術知識を悪用する手口も増えているのだろう。これは電話番号に限られた話しでなく、立派な学歴、輝かしい職歴、一等地の住所、高級車、高級服、高級レストランや高級ホテル、有名人、官公庁、企業等の幹部や政財界の人脈など、様々な小道具を駆使し演出し、大物らしく見せかけて人を信じこませる手法は昔からあった古典的な手口である。これらの手口に最新のデジタル技術、SNS、AR、AIといった技術やツールを組み合わせて進化させているのだろう。人から聞かされた話の内容はもちろん、何故、自分に何の目的でアプローチしようとしているのかなどを冷静に判断する必要があるだろう。大変に親しい人からの話であっても鵜呑みには出来ない。その人がマインドコントロールされている可能性を排除できない。常にゼロベースで冷静に判断すべきだろう。会計士や国税調査官などは若い頃から職業的懐疑心(professional skepticism)を鍛えるように厳しく訓練されるが、高齢者も新人に若返った気分で、聞いた話しを鵜呑みにせずに、懐疑心の感度を高めて様々な演技を想定しながら頭の体操をして常に罠に備えておく必要があるだろう。

 

生成AIから学ぶ

 最近になってChatGPTとかBardといった生成AIが進化しており多種類のAIが利用できるようになってきた。自由研究で何か調べものをするときには、はじめに生成AIに色々と角度を変えて質問をしてポイントを絞ったうえでネットサーフィンすれば様々な危険な罠に遭遇する機会を低減さすことができるだろう。

 2023年9月26にBardを使って実験してみた。

Bardに対する質問

雁の束の間に蕎麦刈られけり

 誰の俳句か

Bardの回答

石田波郷の俳句です。

石田波郷は、1906年から1969年にかけて活躍した俳人です。代表的な句として・・・・・・・・・

以下省略

続いて次の質問をしてみた。

Bardに対する質問

雁の束の間に蕎麦刈られけり

山本健吉の歳時記に載っているか

Bardの回答

はい、載っています。山本健吉の『現代俳句歳時記』(1966年)の「秋」の項に、以下の解説とともに掲載され・・・・・・・・・

以下省略

意外にも的確な回答だったので少し驚いた。けちを付ける気は毛頭ないが、日本語の難しさでもあるが、雁を「かりがね」、「カリガネ」と書き換えて同じ質問すれば全く異なる回答をする可能性がある。

  その後、2024年2月に入ってから生成AI BardはGeminiに改称された。GeminiにもGemini Ultraとか様々な上位レベルのモデルがあるようだが、とりあえず無料で使えるバージョンで以前にBardにした同じ質問を2024年2月13日午前中にしてみた。

 上記と同じ質問

雁の束の間に蕎麦刈られけり  誰の俳句か

無料バージョンのGeminiの回答


「雁の束の間に蕎麦刈られけり」は、江戸時代の俳人、小林一茶の句です。

作者:小林一茶

季語:雁(かり)

意味:雁が飛んでくる間に蕎麦が刈られてしまった。早いなあという驚きと、季節の移ろいの速さを感じさせる句 

以下省略

上位バージョンのGeminiだと別の異なった回答をするのかもしれないがBardの時の回答との違いに驚いた。いずれにしても生成AIは発展途上にあるのだろうと少々安心もした。

念のために、Geminiに後日、2024年4月6日午後3時前に同じ質問をしてみた。

 質問

雁の束の間に蕎麦刈られけり  誰の俳句か

無料バージョンのGeminiの回答

はい、この句は昭和29年(1954年)に刊行された俳句雑誌「雨覆」に掲載された俳人・石田波郷(1918年~1987年)の句です。

...........

以下省略

今度は的確な回答が返ってきた。2ヶ月弱の間に機械学習を積み重ねたのかもしれない。

同じ質問を定期的に繰り返し、その回答の推移を確かめるのも結構面白いと感じた。

2024年の年の瀬に最近、新聞で読んで知ったパープレキシティ(perplexity)に興味があったので無料バージョンで石田波郷の俳句について同じ質問をしてみた。

雁の束の間に蕎麦刈られけり  誰の俳句か

perplexity の回答

石田波郷は、1918年から1987年まで活躍した昭和時代の俳人です  。この句は、1954年(昭和29年)に刊行された俳句雑誌「雨覆」に掲載されました 。

句の解釈や波郷の俳句スタイルについても述べられていた。しかし筆者は俳句を勉強していないので回答の評価は出来ないが、うまくまとめられているとの印象は持った。

2025年1月に入ってからgenspark.ai という文字が目に付くようになったので、ネットで調べてみたら対話型のAI検索エンジンと分かった。無料だったので早速試してみた。お馴染みの質問になるが  雁の束の間に蕎麦刈られけり  誰の俳句か。

Gensparkの回答抜粋

俳人石田波郷(いしだ はきょう)の作品です。この句は、秋の季語である「雁」を用いており、彼の代表的な俳句の一つとして知られています

リアルタイムでネットを検索してそれを纏めているようだ。マインドマップ図を生成するのには驚いた。マインドマップ図は何か資格試験の勉強をする時に頭を整理するのに役に立つかも知れない。

次々とAIツールが登場するので楽しみである。

 筆者自身も当初はAIに懐疑的であったが最近は便利ツールとして有用だと実感するようになった。英語の文でどう訳すのか分からないときにCopilotに尋ねると、それは俗語的なイディオムでこういう意味ですと教えてくれた。年末に電子書籍で O. Henry の全集を100円ちょっとで購入したが2000ページ以上もあったので、とても生きているうちには読みきれないだろうと思いつつも少しずつ読み始めている。
  英語に堪能な人から見ればつまらない話になるだろうが、筆者が感激したCopilotとのやりとりがある。CNNニュースであるコメンテーターの

why that ad Trump ran about Kamala Harris was so devastating was because not exactly on the issue itself  but what it meant 

と話していたtranscriptを見てwas so devastingの主語が何か分からなかったのでCopilotに聞いてみた。回答は「that ad Trump ran about Kamala Harris」だった。run aboutはidiomかと聞いたらイディオムではなくrunという動詞は「広告を出す」や「キャンペーンを行う」という意味で使われており、カマラ・ハリス氏に関する広告を出した  という意味だと教えてくれた。さらに、この文は not ~ but の構文になっているのかと質問すると 『 はい、「not ~ but」の構文です。この場合、「not exactly on the issue itself but what it meant」は、「その問題そのものではなく、それが意味すること」という意味になります。』 と教えてくれた。 広告は視聴者の関心や論点を別の方向にそらして議論を支配しうることまで教えてくれた。runは日常会話で広告を出す意味でよく使われるかと質問したところ 『特にマーケティングやビジネスの文脈では頻繁に耳にします。例えば: "We’re planning to run a new ad campaign next month." 』の例を挙げてくれた。まさに英語の先生である。

   筆者は実用というよりも趣味のレベルであるが簡単なプログラムを書くことがある。時々エラーメッセージがでてどの様に対応すべきか考え込むことも多かった。以前であれば2~3週間試行錯誤することもあった問題がAIの御蔭で数時間以内に解決するようになった。まさかマニアックな特殊な事案はAIには分からないだろうと思いつつAIと対話をしてみると意外にも的確な回答が返ってくるので大変驚いた。たぶん公開されているマニュアル、プログラム事例、解説記事、論文、書籍等は機械学習しているのだろうから当然と言えばそうかもしれない。色々工夫して質問を出来るだけ専門的な範囲にしぼり込めばしぼり込むほど良い回答も得られやすいと感じている。
 職場や学校の中にプログラム言語の達人がいたとしても忙しい最中に何かと色々と質問すれば迷惑になるだろう。人間であれば、いかに寛容な学校の先生であっても、しつこく質問されれば怒りだすだろうがAIロボットはTPO(和製英語らしいが)を選ばず何時でも付き合ってくれる良さがある。
 最近は気が付いてみると生成AIは生活必需品の様な存在になってしまった。高齢者にとってはAIは学習補助、頭脳の補助具として利用できるので大変に便利である。

 しかし、その開発や運用で莫大なコストがかかったAIを無料で一般人が使えるということは見えざる対価を負担しているのかも知れない。ある意味で何か自分自身を身売りしているような不安な側面もある。ルーターやパソコンのMACアドレスが何番のユーザーはどんな分野に関心があり、語学のレベルはどの程度で、理解力は一を聞いて十を知るタイプか、全く違うか等すべてお見通しになっているのではないかと不安な思いもある。ただ現在のところは心配よりも便利さが上まわっている状態である。

 

 

戻る